パソコンが苦手な人でも使える業務システムにするには
業務システムを入れるとき、使うのは会社のなかで一番パソコンに慣れていない人だったりします。
現場で作業をしている方、長く紙とペンでやってきた方、スマートフォンは使うけれどパソコンはほとんど触らない方。その人が使えなければ、どんなに機能が揃っていても意味がありません。
「うちの現場の人には無理だと思う」という理由で導入をあきらめる話は、実際によく聞きます。ただ、作り方を変えれば使えることのほうが多いです。
きっかけになった相談
清掃の仕事をしている知人から、勤怠を紙でつけているという話を聞いたことがあります。
困っていたのは主に2つでした。
集計に時間がかかる
月末に紙を集めて、電卓で計算する。人数が増えるほど時間がかかります。この作業自体は、何も生み出していません。
ミスに気づけない
書き忘れ、書き間違い、読めない字。集計のときに初めて分かって、本人に確認して回ることになります。
そして言われたのが、「簡単に使えるものがいい」でした。機能が多いものではなく、簡単なもの。ここが出発点になりました。
「簡単」は、機能を減らすことではない
よくある誤解ですが、機能を減らせば簡単になるわけではありません。
必要な機能が無ければ、結局その部分は紙のまま残ります。二重管理になって、かえって面倒になります。
簡単にするというのは、機能を減らすことではなく、一回の操作でやることを減らすことです。
入力の手間を減らす
入力ではなく、選ぶ形にする
キーボードで文字を打つのは、慣れていない人にとって大きな負担です。選択肢から選ぶ、ボタンを押す、という形にできないかをまず考えます。 打刻なら、ボタンひとつで終わるのが理想です。
1つの画面で、1つのことだけ
画面にいろいろ置くと、どこを触ればいいか分からなくなります。その画面で何をしてほしいのかを1つに絞る。 迷う余地を作らないほうが、結果的に速く終わります。
現場で使っている言葉を使う
システム側の言葉をそのまま画面に出すと、通じません。普段その人たちが使っている言い方に合わせます。 何と呼んでいるかは、聞けば分かります。
迷わせない、こわがらせない
押せるものは、押せるように見せる
文字だけのリンクや、小さなアイコンは気づかれません。枠で囲う、色を変える、大きくする。 慣れている人には過剰に見えるくらいで、ちょうどいいことが多いです。
間違えても取り返しがつくようにする
いちばん怖いのは「触ったら壊れるかもしれない」と思われることです。そう思われた時点で使われなくなります。戻れる、直せる、確認が出る。 この安心感があると、触ってもらえます。
エラーは「どうすればいいか」を書く
「入力値が不正です」と出ても、どうすればいいか分かりません。「日付は2026/08/28のように入力してください」のように、次の行動が分かる書き方にします。
文字と押す場所を大きくする
細かい話に見えますが、効果は大きいです。小さい文字は読めませんし、小さいボタンは押せません。特にスマートフォンで使う場合は、指で押せる大きさが必要です。
集計は、人がやらない
冒頭の相談でいちばん困っていたのが集計でした。ここはシステムにする一番の理由になる部分です。
打刻したデータがそのまま集計に使われるなら、月末に集める作業も、計算する作業も無くなります。 書き忘れがあれば、その場で分かります。あとからまとめて確認して回る必要がありません。
使う人の手間を減らすことと、集計する人の手間を減らすことは、同時に実現できます。 むしろ、入力を簡単にしたほうが、集まるデータはきれいになります。
紙をやめなくてもいい
最初から全部を置き換える必要はありません。
一部の人だけ先に使ってもらう、一部の項目だけシステムにする、しばらく紙と併用する。慣れる時間をとったほうが、結果的に定着します。
「全員が一斉に切り替える」と決めると、一人でもつまずいた時点で全体が止まります。
いま取り組んでいること
正直に書いておくと、この分野はまだ改善の途中です。
勤怠管理の仕組みを作りましたが、これから実際に、パソコンに慣れていない方に使っていただく段階です。設計の段階で想定していたことと、実際に使ってもらって分かることは違うはずです。
つまずいた場所を見て直していくつもりでいます。使ってもらってから分かることのほうが多いというのが、これまでの経験です。
「うちの現場の人には難しいと思う」という理由で止まっている場合、その前提から一緒に考えられます。 どの作業を、どこまでシステムにするか。全部でなくて構いません。