システムを入れ替えるとき、古いデータをどうするか
システムの入れ替えを検討し始めると、かなり早い段階でこの質問が出ます。
いままでのデータは、どうなるんですか。
そして多くの場合、「全部移してください」という前提で話が進みます。 気持ちは分かります。消えると困るものですし、途中で分断されるのも不安です。
ただ、全部移すのが唯一の答えではありません。 ここの選び方で、費用も、新しいシステムの使いやすさも変わります。
選択肢は3つあります
- 全部移す
- 必要なものだけ移す
- 移さずに、見られる場所を別に用意する
3つ目は、あまり提案されないかもしれません。ですが実際にはこれで足りることが、かなりあります。
全部移すと、何が起きるか
古いデータは、古いシステムの形に合わせて入っています。新しいシステムの形とは、たいてい一致しません。
具体的にはこういうことが起きます。
項目が足りない、または余る
新しいシステムで必須にしたい項目が、古いデータには入っていない。逆に、もう使わない項目が大量にある。
同じ項目でも意味が違う
昔は担当者名を入れていた欄が、途中から部署名になっている。運用が変わったのに、欄はそのまま使われていた、というのはよくあります。
表記が揃っていない
同じ取引先が「株式会社○○」「(株)○○」「○○」で登録されている。人間には同じものだと分かりますが、システムは別物として扱います。
そして問題はここからです。古いデータを入れるために、新しいシステムのほうを歪めることになります。
必須にしたい項目を、空でも登録できるようにする。使わない項目を、過去データのためだけに残す。こうしてできたシステムは、これから使う人にとって使いにくくなります。 過去のために、未来を犠牲にしている状態です。
さらに、変換作業そのものに工数がかかります。データ移行が見積もりの中で大きな割合を占めることは珍しくありません。
判断の基準はひとつ
難しく考える必要はありません。その古いデータを、これから業務で使い続けるのかどうかです。
使い続けるもの — 進行中の案件、有効な契約、現在の取引先。これは移す必要があります。
見るだけのもの — 終わった案件、過去の履歴、何年も動きのない取引先。これは移さなくても、見られれば足ります。
法律上の保存期間のために持っているだけのデータは、後者の典型です。使うのではなく、求められたときに出せればいい。 それなら、新しいシステムに入れる必要はありません。
見るための場所を、別に用意する
実際にやった例を挙げます。
システムを入れ替えた案件で、古いデータを閲覧するためだけの専用ページを、別に用意しました。 検索して、該当のデータを画面で確認できる。それだけのものです。登録も編集もできません。
これで何が良かったかというと、新しいシステムを歪めずに済みました。 新システムはこれからの業務に必要な形だけで作れて、過去のデータは過去の形のまま参照できる。両方の都合を、別々に満たせます。
作るものとしても、閲覧だけなら大きな作りにはなりません。移行と変換に工数をかけるより、安く済むこともあります。
「昔のデータを見たい」と言われたときに、本当に必要なのは検索して表示することだけなのか、それとも新しいシステムの中で編集したり集計したりする必要があるのか。 ここを確認すると、やるべきことが変わります。
移すと決めたときに必要なこと
もちろん、移すべきものもあります。その場合に見ておきたい点です。
データの状態を先に確認する
表記のゆれ、重複、空欄。移す前にどれくらい整っているかを見ておかないと、移行の工数が読めません。汚れたまま移すと、新しいシステムに汚れが引き継がれます。
移行のテスト時間を見込む
一度で完璧に移ることは、まずありません。試しに移して、確認して、直して、もう一度。この繰り返しの時間が必要です。
並行して動かす期間を決める
新旧を一定期間いっしょに動かすかどうか。安全ですが、その間は両方に入力することになるので、現場の負担は増えます。期間は短いほうがいいです。
見積もりにどう効くか
データ移行の扱いは、見積もりの金額をかなり動かします。
「データ移行一式」とだけ書かれている場合は、何件を、どこからどこへ、どういう変換で移すのかを確認してください。 対象を絞れば下がりますし、絞れるかどうかは上に書いた判断次第です。
見積もりの見方については別の記事で詳しく書いています。
「昔のデータをどうすればいいか分からなくて、入れ替えに踏み切れない」というご相談は多いです。全部移す前提で考えなくて構いません。 どれを使い続けて、どれは見られれば足りるのか。そこを整理するところからお手伝いできます。